撮影光源の色、評価光の色

撮影光源の色、評価光の色

2019年1月17日 1 by_ 諏訪 光二
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写真撮影には光が必要。そして完成型となるデータやプリントを見るためにも光が必要。撮影は自然光ならそれを活かす撮影が基本となるだろうし、データを見る光はモニターによるものなので、高性能なモニターを使用して正しく調整すれば良い。
問題は蛍光灯やLED、ストロボといった人工照明を使用する場合だ。
偏った色では正しい色で撮影することができないし、作品を印刷してプリント上の色が求める色になっているかを評価するためには、色の偏りのない光で見る必要がある。

さて、ここ数年 非常に安価なストロボが出回っている。主に中国、台湾などのメーカーのものだ。ネット通販サイトではそれらの並行輸入品が多く出回っており「本当にこの値段でいいの?」といいたくなるような価格で販売されている。機能的にもカメラメーカー純正のものとほぼ同じで、メーカーごとのTTLオートストロボ撮影にも互換性を持たせているものも多い。となれば、数倍の金額を出してカメラメーカー純正のストロボを買うのが馬鹿らしく思えるのもユーザー心理としては当然のことだろう。

ただカメラメーカーの肩を持つわけではないが、純正ストロボなどがそれらの海外品よりも高い理由も分かる。製造コストが仮に同じようなものだとしても、新機能を開発する開発費、宣伝コスト、在庫管理コストなどなどいろいろ盛り込まれている。中でも重要なのは品質基準の管理と保証の問題だろう。純正品は 製造は海外を利用していても日本メーカーらしく一定の品質を保つためのコストをかけており、出荷基準に満たないものは排除し、またそういった厳しい管理基準を満たすことで故障率を下げ、それでも異常が発生すれば修理・交換などの保証をしっかり行っている。
こういった諸々のコストを反映すれば当然価格は高くなる。もちろん企業である以上は利益も必要。純正品の価格はいわば安心のための価格ともいえるのだ。

それでも海外品の安さは魅力で、壊れたら保証してくれなくてもまた買えばいい、と割り切れるならリーズナブルなことこの上ない。筆者も最近このような海外品をいろいろ購入して補助的に使用している。もちろん重要な仕事では純正品や一流ブランドのものを使用することが多いのは事実だが、海外品も使ってみると価格以上に優秀なものもあることが分かってきた。改めて注意を促しておくが、非純正ストロボはあくまでも互換品であり、品質面での保証はそのメーカー次第。使用する場合は全て自己責任となり、それらの商品が起因する不具合がカメラ側に発生してもカメラメーカーは保証してくれない。全て自己責任で使用することが必要になる。通販サイトのレビューなどでもすぐに壊れたなどのコメント見られるので ある程度の事は覚悟しておく必要もあるだろう。

 

■演色性を比べてみる

今回はそんな安価な海外製のストロボの性能を見るために、色を計って比べてみることにした。筆者が持っているストロボやLED照明の色、そしてプリントを評価するための照明の色を高性能なカラーメーターお借りして計測してみた。果たして海外製は粗悪品なのだろうか。

セコニックスペクトロマスター C-700

セコニック スペクトロマスター C-700

今回評価するために使用したのはセコニックのカラーメーター「スペクトロマスター C-700」だ。現在市販されている中で最強クラスのカラーメーターと言っていいだろう。また昨年末には後継となるC-800も登場している。筆者はかなり昔に購入したミノルタのカラーメーター(当時はプロ定番のメーターだった)を持っており、色温度や使用すべきフィルターナンバー等が表示できる。しかしC-700は演色評価モードを持っており、演色評価指数を数値で表示するだけでなくグラフでビジュアル的にも表示・確認可能なのだ。

プリントを見るための評価用光源ならば、とりあえず色温度を見て、また色ごとに大きく偏っているところがないかをRa値と各色ごとのグラフを見て確認すれば良いだろう。

ストロボやLED照明の場合はこれらの数値だけでその善し悪しが判断できるわけではないことははじめに断っておこう。撮影用の照明はその目的によって求める性能が異なり、評価基準も異なる。色がどんなに正確で安定しても配光(光の広がり)が悪いものは使いにくいし、チャージが遅い、長時間連続で使えるか、故障率などなど、考慮すべき要素はいろいろある。ここでの比較はあくまでも参考値としてみて欲しい。さらにはテスト環境は完全と言いがたい中でのテストであり、条件は安定しているがニュートラルグレー内でのテストではないため 周りからのカブリの影響も多少は入っているであろうことから、公称値とは異なっていることも予想される。

■まずは通常蛍光灯と高演色性蛍光灯を比較

まずは普通の蛍光灯がどの程度のもので、色評価用の高演色性蛍光灯がどれほどのものか比べてみよう。プリントを見るならこれがポイントになる。

色評価用の高演色性蛍光灯。プリントの評価はこの光の下で行うのが基本だ。

 

試しにキッチンにあった普通の昼白色蛍光灯(5000K)とすでに長時間使っている高演色性蛍光灯(5000K)を計ってみたところ、高演色性蛍光灯はRa値 98.6。さすがに数値は高く、どの色も安定しており、プリントの色を評価するにしても十分な性能といえる。
それに対して通常の蛍光灯は、色温度こそ5000Kとして販売されているものだがRa値は68.8。かなり低い数値だ。また数値の違いだけでなく、グラフを見るとガタガタで、R9の赤の部分にはまったくグラフがないことが分かる。つまり、この光の下ではプリントの色が正しく見えないのだ。特定の色だけ弱く見えたり、偏ったりするのだ。

普通の蛍光灯を計測したもの。色温度は5000Kの昼白色タイプ。色温度こそ5000Kだが酷い結果だ。この光の下ではまともな色は確認できない。

 

みなさんもプリントを評価するときには高演色性の蛍光灯やLEDで見て欲しい。少なくともプリンターの色の善し悪しを語るなら最低限必要になる照明といっていいだろう。ちなみに、筆者のこの高演色性蛍光灯はもうとっくに交換してもいい時期。新品ならもうちょっとだけ大きな数値になり より精度が上がる。

 

■LED照明を計る

ここからは照明の比較だが、グラフも一緒に掲載したいところだが今回は初回ということもありRa値のみでシンプルに掲載・比較してみる。またの機会があればグラフ等も掲載しながらの比較をしてみたい。

まずはLEDライトから。ここで取り上げたLEDライトはスタジオで組まれているような高価なものではなく、中華製の安価なもの。値段にして5,000~6,000円。それでもいずれも演色性95以上を謳っていた製品だ。ある同じ製品が3つ、もう一つは単独で計4台を計測した。いずれも色温度は調光可能なモデルで、設定値ではなく実測値で5000Kの近似となる位置で計測している。

まず同じモデルのAが94.5、Bが94.4、Cが94.0と、商品説明にあった95にはとどかなかったものの、十分健闘している。しかしグラフを見るといずれもR12だけが少し値が低い。ここで比較した4台すべてで同じ傾向。この辺が高価なものとの違いか。それでも2時間程度つけたままにしても安定していた。あとは同じ商品でも個体によってによって3台でも0.5の差が出ていることが大きいとみるか、小さいとみるかは人によって分かれそうだ。5,000円という価格からすれば十分だと思えるが。
もう1台の6,000円した方は97.5と良好な数値。ただ難点は調光時に5000Kあたりでアンバー色のLEDが光り始める切り替わりのポイントがあり、その境目付近では急激に色が変わるため、求める色温度によっては安定させにくい事も考えられる。が、このアンバー色のLEDが光り始めてからの5000K以上では安定していた。

筆者の手元にあったLED照明ではR12の値だけが少し低かった。それ以外は価格以上に優秀。特にこのモデルはRa値97.5と高く、厳密な色を求める撮影でなければ十分だ。

 

これらのLED照明はハッキリいって価格以上だ。数値だけでなくグラフも安定していた。スタジオで商品撮影をする際にはもう少し精度を求めることもあるだろうが、もう少しラフな目的で、ましてや外に持ち出してビデオライトとして使うなどであれば十分なものだ。実際にこれまで使っていて不満がなかったが、こうして数値で見るとちょっとお得な買い物をした気分だ(笑)

ちなみに、同じようにLED照明を当てるということで、スマートフォンのLEDライトも計測してみた。

原稿執筆時点で現行機種となるスマートフォンのLEDライトの数値。かなり低いし、赤が抜け落ちている。これでも自然な色を再現と謳っている製品だ。本体での補正も行われているはずだが、そもそものライトの色がちゃんとした色を再現できない。

 

が、どれもRa 50~65程度。赤が抜け落ちているものばかりで、正しい色と謳っているモデルでもまともな色の光を放っているものはなかった。想像以上に結果が悪いので個別の数値は控えるが、機会があればこれもいつか比較してみたい。まぁ、スマホにそこまで求める人はいないのかもしれない。ちゃんと撮りたければ大きな一眼でなくともカメラでストロボを使って撮りたいものだ。

 

■ストロボを比較する

海外製の安価なストロボにはたくさんのメーカーがある。GODOX、NEEWER、Yongnuo、Cactus、FOSITAN、K&F Conceptなどなどなど。販売メーカーは異なっても外観もスペックも同じでメーカーロゴだけ異なるOEM商品もあり、どれがオリジナルかよく分からないものもあったりする。筆者は周りで使用して安定していたという実績からGODOXを好んで購入している。GODOXはネット通販では保証の薄い並行輸入品が安価に売られているが、ケンコー・トキナーのKPIが代理店となり、国内正規販売もしている。

今回比較したのはそのGODOXのクリップオンタイプTT685を2台、TT350、そしてコンパクトながらヘッドも換えられるAD200を2台(フラッシュヘッドとチューブヘッドで合計4通り計測)、そしてすでに現行ではなく使い古しているがキヤノンの550EX、シグマのEF-630。そしてストロボの一流メーカーProfoto A1をテスト。ついでにフォトナのアナログの2400WジェネMUSASHIも純正ヘッドで1灯200W発光で加えている。Profoto A1は2台あるのだが、執筆時に1台しか手元になかったため、2台のばらつきテストはできていない。

ストロボは光量調整ができるので、1/1~1/128までの各ステップで、各10回計測して一番良い数値を並べている。ズームは内蔵リフレクターの影響も踏まえるために50mm画角をカバーする位置に。また、同じ光量での安定性も見るために、1/32を参考にその10回の数値を掲載。ばらつきを見られるようにしている(Profoto A1は分数表示ではないため5.0の値)。以下の表はクリックすることで大きく表示可能。数値的にはRa95に達していれば実用上困ることはないはずだ。

 

クリックで大きく表示可能。 Ra値99.0以上には赤を、98.5以上にはオレンジを、98.0以上には黄色をつけている。赤やオレンジが多いほど演色性が高く、また横軸で見てまんべんなく色がついているものが安定性が高いといえる。

 

クリックで拡大可能。色分けに関しては上の表と同じ。同じ光量で発光させてのムラを確認。横軸で見て色(数値)が揃っているほど安定している。

 

結果を見ると、いずれの機種もフル発光と1/2発光ではやや数値が落ちるが、それ以下の光量では安定しているのが分かる。GODOXはどんなものかと思っていたが、かなり健闘しているのが分かる。特に小さなTT350が健闘している。AD200にはもう少し期待したが、フラッシュヘッドではあまり良い数値は出ていない。が、筆者がメインで使用しているチューブでの発光ではそこそこ良い結果が出た。

キヤノン純正は古くなってはいるがどの光量でも安定しているのが分かる。また、シグマも光量1/4以下なら安定している。いずれも国産ブランドの面目は保てているのが分かる。
別格なのはProfoto A1だ。フル発光こそやや数値を落としているが、それ以外は素晴らしい数値。99.4なんて驚きの数値もでている。しかも各光量で10回発光させての安定性も見事なもの。値段はやや高めだが納得できるものだ。

さて、結果を踏まえてみると「GODOXも結構使えるじゃないか!」というものに。最低限の数値は確保していて純正の1/3以下の価格はかなりのお買い得だ。ただし、最初にも触れたように故障や配光など他にも検討すべき事はあるのだが、それにしても実用十分なものだ。今回の比較テストでは筆者の所有しているGODOXだけを使用しているが、また機会があれば同クラスの他メーカーも交えて比較してみたい。
そしてもう一つはっきりしたのは、Profoto A1の光の質の高さ。別格だ。A1の質の高さが際立つ結果になった。
中華製などの安価なストロボは説明書の内容も乏しく、初心者が最初に持つストロボとして気軽には勧められない。が、とにかく安価に購入したい人、筆者のように複数メーカーのボディを使用していて安価にそれぞれのストロボが欲しい、多灯などのシステムを安く組みたい人にはかなり敷居を低くしてくれる存在といえるだろう。
筆者はProfoto A1が2台使える状況にありちゃんとした光は確保できているので、今回の結果に気をよくしてニコン用がなかったのでTT685Nをもう一台注文した(笑)

 

 

Kohji-Suwa 諏訪 光二 (すわこうじ・Kohji Suwa ):
1968年生まれ。写真家。新しいもの好きアラフィフ男。写真家ではあるけれど、あれこれ新しい事をやってみてはそれも仕事として楽しめるようにあれこれと企画。故に多趣味で散財が激しく破産寸前。千葉県茂原市に在住し、敷地内に森を作って豊かな自然を楽しんでいる。

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